導入編

ビールができるまで


※上図は自家醸造が認められている諸外国の例です。

ビールサーバー

樽とディスペンスヘッド

炭酸ガスボンベ

ビール樽開栓工具

発酵容器

仕込鍋

その他必要な道具

あると便利な道具

ビールサーバー

まずは最も高価な買物となるビールサーバーについて見てみましょう。この項に関しては自ビールに限らず市販樽詰ビールをご家庭で楽しみたいと考えている方も共通ですので参考になさってください。
ビールサーバーの本体部分は常温のビールを冷却するだけですので樽ごと冷せる大型の冷蔵庫をお持ちの方はこれすら必要ないのですが、ビール樽に直接つなげるディスペンスヘッドと、炭酸ガスのボンベに直結する減圧弁、蛇口となるコックは必要ですので、これらがセットになっているビールサーバー一式をお買求めになるのが手っ取り早いでしょう。新品ともなると十万以上しますので現実的ではないのですが、YAHOO!オークションなどで出回っている飲食店の放出品なら1万〜2万円で落札できます。難しそうな洗浄もすぐに慣れます。
また試験的に使用したい場合やイベントで1日程度利用したい場合はサーバーをレンタルしてくれる酒販店もあります。その際、生樽を買うこと、保証金、ガス使用料などが必要になります。

ビールサーバーの種類

瞬冷式

氷冷式

空冷式

ダイレクト式

中に冷却された水槽が組込まれており、その中のチューブをビールが通ることによって冷される仕組です。水槽を冷すため電源が必要になります。多くの飲食店が使用し、中古市場でも多く出回っています。

ラジエータフィンの付いたプレートの中をビールラインが通ることによってビールが冷却されます。電源は要りませんが大量の氷が必要となり、また排水も必要になります。アウトドアでは重宝ですが毎日使うには適していません。

大型の冷蔵庫にコックが付いた物と考えてください。ヘッドからコックまでが冷蔵されてますので雑菌の繁殖が極端に少ないというメリットがありますが、常に予備の樽を冷す必要があります。また夏場は瞬冷式と比べると冷えが甘く物足りなく感じるかもしれません。

直接樽に付けるサーバーで冷却機能は付いていませんのであらかじめ冷蔵庫で冷しておき、使用時はカバーを掛けて保冷する使い方が一般的です。中古市場にはほとんど出回りません

上記のようにビールサーバーには大きく分けて4種類あります。それぞれ利点はあるのですが、これからビールを作って毎日飲もうというヘビーユーザーには瞬冷式をお勧めします。これは中古市場にも多く出回っており価格が手頃なこと、真夏でもキンキンに冷えたビールが抽出できること、電源を入れ忘れても氷さえあれば応急的に使用できることなど、総合的なパフォーマンスに長けているからです。尚、瞬冷式は中の銅管に氷さえ張付いてさえいれば使えるので使用しないときは電源を切ることで電気代も節約できます。

サーバーセットは以下の物がそろっているか確認してください。もちろんいくつかのパーツが無くても後で買足すことはできます。

  1. サーバー本体(コック、ドリップトレー含む)
  2. ジョイント(サーバー側とディスペンスヘッド側)
  3. ディスペンスヘッド
  4. 減圧弁
  5. ビールチューブ
  6. ガスチューブ
  7. 洗浄樽
  8. 洗浄スポンジ

このうち、ビールチューブ、洗浄スポンジ等は消耗品ですのでセットに含まれていても別に新品をお買求め下さい。

サーバーグッズはTT-LIQUORで取扱っています。

またガスボンベは樽を扱っているところでレンタルしますから、普通セットには含まれていません。

ビール樽側

ガスボンベ側

洗浄用具

樽とディスペンスヘッド

※採用メーカーはライセンス生産品を除きます。
※アメリカンサンケイには上記のスクリュータイプの他にドロップインタイプがあります。

ビールサーバーの種類の項では冷却方式で分類していますが、飲みたい銘柄(メーカー)によってそれに付帯するディスペンスヘッドを選ぶ必要があります。日本で流通しているものはアサヒ・サッポロ・サントリーが採用するサンケイシステムとキリンが採用するグランディシステムがありますので、ビールサーバーを購入するときはお目当ての銘柄に対応したディスペンスヘッドが付いているか確認してください。上図で同じ枠で囲ってある物は細部が異なりますが同じ規格ですので互換性があります。具体的にはアサヒ・サッポロ・サントリーのいずれかのサーバーセットを買えば同じヘッドで3銘柄を楽しめます。逆にアサヒ・サッポロ・サントリーのディスペンスヘッドではキリンの樽は適合しません。オークションなどの中古市場では商品説明と上図の写真を参照して下さい。
次に上図の樽とディスペンスヘッドの種類について詳しく解説していきます。

サンケイシステム
ビール用の樽としては世界的に最も採用されている規格です。フィッティングと呼ばれる口金にヘッドを引っかける爪(ラチェット)が2つあるのが特徴です。サンケイシステムはさらにヨーロピアンサンケイとアメリカンサンケイに分れます。
ヨーロピアンサンケイは日本の大手ビールメーカーが採用していることもあり、日本の地ビールメーカーやオリーブオイルの量り売り等多分野で使われています。従って扱う商社やネットショップが多く、中古市場でも多数出回っているので最も入手しやすい規格と言えるでしょう。当サイトではこのヨーロピアンサンケイを中心に解説していきます。
同じサンケイシステムでもアメリカンサンケイは微妙にサイズが異なり、互換性がありません。日本で採用しているメーカーは皆無ですので滅多に市場に出回ることはないのですが、海外の通販などで樽やヘッドを購入するときは形が似ていますので気を付けてください。

グランディシステム
日本ではキリンだけが採用する規格です。フィッティング上部がフラットですので、使用後水をかけて軽くふき取るだけで衛生的に保てます。

ソーダケグ
炭酸飲料等のサーブに使われる物です。蓋が大きく手を入れて洗えるという大きなメリットがあるためホームブルーでも多く使われています。しかし扱う業者が少なく中古市場では滅多に出回らないため、新品・中古ともサンケイケグに対して一般的に高額になってしまいます。またコネクター等も独特なものになってしまいますのでサンケイとの互換もなくなります。自家製ビールしか飲まない方にはこちらの方が使い勝手はいいかもしれません。ソーダケグを使う自家醸造法はホームブルーイングサービス等の自ビールサイトで扱っていますのでそちらを参照して下さい。

ディスペンスヘッドのビールジョイントとガスジョイント
サーバーセットを一式購入する場合はビールライン、ガスラインのジョイントが総て適合した物で組上げられていますが、サーバー、ヘッド、減圧弁等を別々に購入する場合はジョイントに気を付ける必要があります。一般にガスジョイントは4社共通ですが、ビールジョイントはアサヒ・キリンとサッポロ・サントリーは径が違いますので気を付けてください。ヘッドのジョイントに関してはTT-LIQUORで詳しく取上げられています。

はれてビールサーバーが届いたらまずは洗浄です。どのような環境で使用されていたかはわからないので念入りに洗浄しましょう。洗浄樽で一度水通しをした後ビアラインに水が満たされた状態で一昼夜おきます。その後スポンジ洗浄を数回繰返し、今後容器の殺菌に使うエチルアルコールを洗浄樽に入れて水通しの要領でアルコール殺菌します。最後にもう一回水通しをして完了です。それでも出てくる水に臭いがあるようならこれを繰返します。(基本的な使い方・洗浄の仕方はビールサーバードットコムのサイトで取上げられています。)

ビールサーバーを設置したら早速樽ビールを買いに行きましょう。樽ビールはもちろんスーパーでは取扱っていません。近所の酒屋さんでは取扱っていますが、10リットルでお酒の安売のお店とかなりの価格差があります。業務店ならメンテナンスの関係で利用されていますが、個人使用の場合はお近くの安売店を利用しましょう。「やまや」や「マインマート」はリサーチ上優良店ですので利用してみて下さい。
樽ビールは10リットル4500円程度ですが樽の保証金が1000円(消費税込みで1050円)上乗せされますので5500円程度です。もちろん返却時に1000円戻ってきます。

仕込み用の樽
本ページでは市販ビールと同じサンケイシステムの樽を利用します。前述のように同じ規格の樽を使うことによりディスペンスヘッドを共用できます。ただし仕込み用の樽は中古・新品に限らず必ず正規に購入した物をお使い下さい。上記の保証金とは飽くまでお借りすると言う意味で1000円で購入できるという意味ではありません。また樽は決められた用法のみの使用で貸出されていますので中に飲料を詰めるなどの行為は用法義務違反になります。
新品のサンケイ樽を希望の方は実費にて購入できる所をご紹介いたします。海外の通販に抵抗のない方はSABCO INDUSTRIES, INC.でも購入できるようです。

樽の切替えはヘッドのレバーを上げ(ガス圧はそのままでかまいません)樽から外し、接触部分を軽く水で濯いで新しい樽に接続します。

最後に樽の容量ですが、一般に市販されている樽ビールは開封から1週間程度で使い切るようにと言われています。温度差の激しい日のあたる場所に置かなければ常温で1週間程度は持つと解釈しています。

炭酸ガスボンベ

樽と一緒に炭酸ガスの入ったガスボンベも一緒に買いましょう。ガスボンベ自体は5kg用、5000円でレンタルします。中の炭酸ガスは2000円程度ですので合計7000円必要になりますが、中身が無くなったら次回からは2000円の充填料で済みます。この値段もお店によってまちまちなので必ず確認しましょう。

5kgのガスで普通のご家庭では半年以上持つそうですが、自ビールでは仕込にも使用しますので年間3本位使用します。どちらにせよ初期投資が高いだけであまり気にするコストではありません。

ただしサーバーの種類によってはガスカートリッジを使う物があります。これは大変コストがかかりますので専用のアダプタを使ってガスボンベが使えるようにしましょう。

ビール樽開栓工具

世界的に普及しているサンケイシステム(ヨーロピアン)の蓋(フィッティング)を外して飲料を詰込むための工具です。当方のオリジナル商品で他では売っていません。現在流通しているほとんどのヨーロピアンサンケイに対応しています。詳しくはビール樽開栓工具のページへ。

発酵容器

ビールを発酵させるための容器です。専用の物もありますがホームセンター等で売っている20リットル位の食品用の容器から使いやすい物を使用します。
選ぶポイントとしては

  1. 食品用であること
  2. 洗いやすいこと
  3. 傷つきにくいこと
  4. コック等ウォートの移行が容易なこと

1.発酵容器は長時間ウォートに浸かることになります。ですから、食品用容器と同じ素材で出来ているからと言って安易に収納製品等を流用するのは避けたい物です。
2.発酵容器には雑菌の温床となる洗い残しは絶対に避けなければなりません。ですから構造がシンプルで手を入れて洗えることが大前提となります。
3.雑菌は容器の細かなキズにも入り込みます。ですからプラスチック容器を使用する場合は固い物で傷つけないように気を使い、洗浄の時も柔らかいスポンジを使用しましょう。
4.発酵終了時には酵母の澱が容器の底にたまっています。樽詰の際はこの澱を樽に移さないように上澄みだけを樽に入れなければなりません。また、この時点で外気は出来るだけ巻込まないように配慮しなければならないためお玉で移すようなことは出来ません。ですから樽や瓶に移し替えるのはサイフォンを利用するか、発酵容器下部にコックを設ける必要があります。

発酵容器の例

アウトドア用給水缶

食品保存容器

市販発酵容器

発酵期間中は横置き、樽詰の際は縦にしてコックからウォート(若ビール)を出します。そのまま使えて難しいテクニックも必要ないのですが、洗いにくいのが難点です。

お米などを保存する簡易シール付の容器です。コックが無いのでコックを取付けるか、サイフォンでウォートを移します。

K-BOX 22.5リットル ASVEL(1270円)

プラスチックのペール缶にコックが取付けられています。多少高価ですが、それなりに便利です。

上記の内最も入手しやすくウォート(若ビール)を移すのに適しているのはアウトドア用給水管です。ただ洗いにくいのが難点ですので2、3度使用してみて市販発酵容器や食品保存容器にコックをつけた物に移行してもいいと思います。市販発酵容器はそのまま使えますが食品発酵容器にコックを取付けるとホールソゥなどが必要になりますのでなかなか手間になり、結局同じくらいの値段になります。ただアウトドア用給水缶と上記のK-BOXは特定のクーラーボックスに入りますので夏期のラガー醸造にも使えます。
ビニールチューブ 発酵容器のコックにはまる径のビニールチューブをホームセンターなどで50cmほど買っておきます。ウォートを樽に移すとき、外気を取込まないようにするためです。

仕込鍋

お湯がわかせれば普通の調理用鍋で結構ですが、できればホームセンターで売っている一番大きな鍋を購入しましょう。モルト缶は非常に粘度が高く、小さい鍋だと焦付くおそれがあります。ご家庭で使用しているものでも念入りに洗い、油分が残らないように気を付けてください。

その他必要な道具

温度計 普通に売っているガラスの棒温度計です。0度〜100度位のもので結構です。

消毒液 家庭用塩素系漂白剤(キッチンハイター等)とエチルアルコール(70%位の消毒用、薬店で売っています)。アルコールはスプレーに入れておくと便利です。

お玉 一体成型の物を専用に使いましょう。継手のある物はその間に雑菌や油分がたまっています。

あると便利な道具

クーラーボックス

 

夏期にラガーを仕込んだりするのに便利です。ただし20リットルの発酵容器が入る物となると限られてきます。
現在確認している物は写真のコールマンスチールベルトクーラー+アウトドア用給水缶orASVEL K-BOX 22.5リットル位です。プラスチック製のコールマン他のクーラーボックスはどんなに容量が大きくなっても幅が大きくなるばかりで奥行はさほど変らず、食品保存容器は入りません。
スチールベルトクーラーは見た目が良くアウトドア派の憧れのモデルで、同じ容量の約3倍します。プラスチック製のクーラーボックスが5〜6千円で買えるのに対し、スチールベルトクーラーは実売15,000円以上します。実際、私がビール醸造のため買った道具で一番高額な物がこのクーラーボックスです。
真夏の最も暑くなる頃は朝、晩とアイスパックを入替えますが、冬季はほとんど何もしなくてもラガーが作れます。また光を遮断する面でも有効です。
クーラーボックスはいざというときにキャンプやバーベキューに使えるように穴など空けずに使いたい物です。そこでほとんどのクーラーボックスにあるドレンを利用します。写真のように電子温度計のセンサー部をドレンを通して内側に引込み、切込みを入れたゴムキャップで蓋をします。これにより庫内温度を常にチェックすることができます。

比重計
ビールキットには初期比重と最終比重とが記されている物があり、それを目安に樽詰のタイミングを計ります。そのウォートの比重を計るのが比重計です。一般的な使い方としてはイースト投入後、サンプルをシリンダーに採取し、ウォートと同じ状況下で常に比重をチェックします。1500円程度ですので最初から使ったほうがいいかもしれません。

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