上級編

ここからは自家製ビールをより美味しくするためのステップアップです。上級編と銘打ってはいますがある程度経験の積まれたホームブルワーのほとんどの方が実践している中級編以上の項と言えるでしょう。その中でも比較的簡単に実践できるものをピックアップしてありますので臆さず試してみてください。きっとワンランク上のビールが出来上がることと思います。

ウォートチラー

グローブバッグを作ろう

ガスジョイントを作ろう


ウォートチラー

ウォート(麦汁)を煮込んだ後仕込編ではバスタブなどで冷やしていますが、煮沸からイーストを投入できる温度帯(18°〜24°)に下げる時間を極力短くすることにより雑菌の繁殖を押さえ高品質なビールを作ることが出来ます。そこで使用されるのがウォートチラーです。この器具を使用することにより仕込み時間の短縮にもつながり、また急冷することによりコールドブレイクという効果で澄んだビールになると言われています。

インマージョン式

コイル状に巻いた銅管を煮沸鍋に入れた後銅管内に水道水を流すことにより冷やす仕組みです。比較的簡単に製作でき扱いも簡単なので入門用のチラーとして位置づけられていますがイーストをピッチ出来る温度に下げるまで時間がかかります。
使い方
コイルの下の方から伸びているin側にシリコンチューブを取り付けて蛇口に接続します。out側も同様にシリコンチューブを取り付けてシンクに排出できるようにします。シリコンチューブを使うのは100°C以上の熱湯に耐えられるからです。
煮込み終了前の15分位にチラーを煮沸鍋に入れて殺菌しそのままコンロから下ろし水道水を流して鍋の中のウォートを冷却します。その間対流させるためお玉などで撹拌したほうが早く冷却出来るのですがその反面雑菌が入り込むリスクが伴います。冷却水以下には下がらないのでビールサーバー用チューブアダプター等で冷却水を冷やすと効果的です。

作り方

ホームセンターでφ(直径)8〜9.5mmなまし銅管10Mを煮沸鍋に入る大きさに樽などを利用して巻きます。

両端をゆっくり銅管が折れないように曲げます。上図の様に急な角度で曲げるときはパイプベンダーか砂を詰めて曲げてください。

カウンターフロー式

コイル状の管が二重構造になっていて内側にウォートを流し、外側に冷却水を逆向き(カウンター)に流して冷却効率を高めたチラーです。多くの上級者が使っています。
非常に冷却効率が高く真夏以外は19Lのウォートを15分〜30分でイーストをピッチ出来る18°〜24°まで下げることが出来ます。また温度が安定すれば全量を冷やす前にイーストを投入してもかまいません。
ただし冷却水(水道水)以下には物理的に下がらないので夏場などはチラーごと氷水に浸けるなどの工夫が必要です。またウォートを流し込むためにサイフォンの技術が必要になります。殺菌の工程やメンテナンスで多少扱いが面倒です。
使い方
ウォートin側を煮沸鍋に、ウォートout側に発酵容器にシリコンチューブでつなぎ熱湯を4Lほどサイフォンで通し殺菌します。その後ウォートを導きます。一方水道水in側は蛇口につなぎ、水道水out側から出てくる冷却水はシンクに排出します。
出てくるウォートの温度調整はウォートin側のシリコンチューブにクランプ等をかませ流量を絞るか冷却水の流量で調整します。

インマージョン式とカウンターフロー式の性能の違いや製作キットはアドバンストブルーイングで詳しく解説されています。

疑似カウンターフロー式

もし銅管の内部にキズや錆がないインマージョン式のウォートチラーがあるならば、ご家庭の洗濯機の中に入れて銅管内にウォートを流すことによって擬似的なカウンターフロー式のチラーになります。インマージョン式と比べて遙かに高い冷却性能を発揮します。
使い方
チラーは洗濯機のドラムや撹拌翼に当たらないようにひもやワイヤーで吊るします。
洗濯機は濯ぎの設定で水を流しっぱなしにします。
チラーのin側からサイフォンでウォートを流し、out側から発酵容器へ導きます。
温度が下がりきらない場合はチューブをクランプで絞り流量を調整します。

サイフォンの方法
ビール作りもより品質のいい物を作ろうと思うと必ずサイフォンの技術が必要になってきます。チューブを介してウォートの移動を行なうことにより雑菌の混入を押さえられます。仕込みの環境によっては頻繁に使用するテクニックですので必ずマスターしましょう。
サイフォンとは負圧により液体を吸い上げる現象のことを指します。身近な例ではストーブのカートリッジに灯油を入れるポンプ(お醤油ちゅるちゅる)が挙げられます。赤い部分を数回押すことで灯油が吸い上がり、灯油がカートリッジに導かれればあとは何もしないでもどんどん流れていきますよね。一番高い所まで吸いあがった灯油は重力によってカートリッジに流れ込みます。この時のチューブの中で負圧の状態になり灯油を吸い上げる力となるわけです。難しい理論は理解しなくてもかまいませんが、吸い出した液体を保存する容器は吸い上げる容器(煮沸鍋)よりも必ず下に配置し、高低差をつけることが重要です。

イースト投入の適温になったウォートが入った鍋に消毒したシリコンチューブに銅管を短く切ったものを差し込みウォートに沈めます。カウンターフロー式チラーを使う場合は煮沸鍋と発酵容器の間に組み込みます。

エンドをつけたシリコンチューブの反対側に園芸用チューブジョイントを取り付けジョイントの手前までウォートを吸い上げます。

チューブの先をつまみジョイントを外して発酵容器にウォートを流し込みます。

ウォートを移す速度を変えたいときはクランプなどでチューブを挟んで流量を調整します。

グローブバッグを作ろう

グローブバッグとは医療機関や実験室で無菌空間を作るために使われているグローブボックスを簡易的に再現した物です。グローブバッグを使うと例えば無濾過のクラフトビール(350ml)の澱からスターターを作ることが出来ます。高価なリキッドイーストを取り寄せる事なく素性の良いイーストが利用できるメリットがあります。

グローブバッグは実験用器具取り扱い店で入手出来ますが、ロットや個人販売はしないなどの制約がありなかなか入手しにくい物です。また実験用のグローブバッグはイースト培養には使いづらかったりします。それなら100円均一でお手軽に作ってしまいましょう。

<用意する物>
1.洗濯機用ゴミ取りネット×2
2.衣類用圧縮袋
3.ゴム手袋
以上の材料は全て100均ショップで入手出来ます。
ゴム手袋は小さめの物でしたら細かい作業が出来ますが脱着しづらいため大きめの物の方が使いやすいと思います。

まずはゴミ取りネットを分解します。写真のように大きく3つの部品に分かれますが必要なのは青い外枠だけですのでネットは洗濯機に設置してあるゴミ取り部分の換えに使用してください。

吸盤やフロートの着いた足を外枠の円に沿って綺麗に切り取ります。

ゴミ取りネットから作り出した部品です。これがゴム手袋を圧縮袋に固定する枠になります。

圧縮袋の上に左記の枠を使いやすい位置に配置します。

枠から約1cmくらい内側をマジックでマーキングし、圧縮袋の内側にカッターマットを入れてマーキングに沿ってカッターで穴を空けます。

ゴム手袋を裏返し枠の雌(大きい方)を写真の様にかぶせゴム手袋の縁を折り返します。

枠の雄(小さい方)を圧縮袋の内側に配置します。カッターマットは圧縮袋に傷を付けないように雄枠の下に置いたままにしてください。

出来上がりをイメージしながらゴム手袋の向きをあわせ枠の雄と雌をはめ合わせます。

最後にゴム手袋を元に戻して完了です。もう一方も同じように作業してください。

ガスジョイントを作ろう

当方の商品「PET用カーボネーター」をガスボンベにつなぐため必要なガスジョイントはビールサーバーをお使いの方ならディスペンスヘッドに必ず付いているのでそのままつなげればいいのですが、「PET用カーボネーター」を目的にガスボンベや減圧弁を導入した方の中にはガスジョイントに関するお問い合わせが多々あります。
当HPで紹介しているビールサーバーグッズのネットショップ等でガスジョイントは入手できますがパッキンが付いていない場合があります。「PET用カーボネーター」のジョイント部はステンレス製ですので金属製のガスジョイントの間には必ずゴム製のパッキンをかませる必要があります。しかしこのパッキンは扱いがなかったり入手困難であったりします。
ここではホームセンターで購入可能な部品で作る最も安価なガスジョイントの製作方法を紹介します。

<用意する物>
1.浄水器用ホースニップル PZ907(KVK) JAN 4-952490-140994 480円(コーナン)
2.内径6.3〜7mm程度の耐圧ホース 5cm程度
 一例:TOYOXヒットラン HR-6100B 6.3×10 JAN4-975196-900907 398円/m(ロイヤル)
 切り売りの場合は1m以下でも販売してくれます。
3.異径チューブアダプター 小
 内径3〜5.5mmのチューブと5〜9mmのチューブをつなぎます。20円(ビールを作ろう)
 PET用カーボネーター等と一緒に同梱出来ます。

尚、減圧弁とガスジョイントをつなぐガスホースはホームセンターのエアー工具売り場で外径8mmのもので代用出来ます。

そのままつなげても使用出来ますが、滑りを良くするとより使いやすくなります。

まずホースニップルを2つに分解します。

ニップルにパッキンを付けたまま荒めのペーパーヤスリで丸く均等に削っていきます。

時々組み直し、回してみてスムーズに回るまでパッキンを削ります。
削りすぎると気密漏れを起こすので注意してください。

ニップルを洗い削りかすを落とした後チューブアダプターにつなげます。入りにくい場合は熱湯に浸けて柔らかくして差し込むとうまく行きます。

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